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2010年4月5日月曜日

服喪のスートラ3 此の岸で鹿毛は留まる



苦も取り除かず もらい泣きしている悲などない
行くものは行かず 中観の果て 慈悲心鳥
宝蔵も曇鸞も道綽も善導も法然も親鸞もバクテリアとして嬰児級だ 
有機体を横目で睨んで飛び去ってゆく通過点である駅
いじめに気付いた時 炙り出されるマゾッホであった自己
微笑は2009年 台風となって阿闍世王を救い地球を揺する

天体望遠鏡の拡大された画像に宇宙風 揺らぎ
回転し捻じ切れる白夜の日まわり
北京の蝶が台風を発生させる 超因果風船現象 他者の影
灯明に集まって絶滅する虫は 人間に天誅を与える
降りる乗る乗り換えるすれ違う 何処にもある誰とも会わない駅
無いことにはじめて気づいた闇の灯明であり 始まり A地点

ぼくの人差し指とジイジの人差し指がÅ 波長で繋がった
懐中電灯を蛍光灯の星型の目印に当てると 小さな星はゆらゆら揺れた
「ジイジ去年と声がちがう!」「差し歯にしたからね!」
壁の色もピンクから空色に塗り替えた 短い夏の日
懐中電灯が立ち上げたUFOのある四畳半宇宙だ
もう一つの星が向こう側 空色の地平線に沈んだ 影となって

皇居前広場あたりに限りなくループを巻いて折り畳んだ影を置く
東京駅辺りに角膜があり 二重橋付近の信号機からはシグナルが映え
自動車は西側の一角で造られている 街中で自分の道を見付けることが出来る 
自動車は衛星によって首都高速に誘導され 定められた地区に到着するが激しく揺れる
その後は大型タンカーに詰め込まれ 新しい目的地へと旅立つ
長い航路でバラバラに解体され 部品から新しい車を組み立てる

歩行者を震え上がらせる 東京など都市 駅付近
瓦礫を横切って 犀の角 糞掃衣が行く
海に砕け散る流れに攫われながら 
呼び寄せられ 凭れかかった柳がゴッホの糸杉より
セクシーに揺れた
一瞬にして月を飲み込む宇宙

「大馬鹿者!」関係を保とうとする兄貴分の声がいつも注意する
ステーション新宿駅ステーション新宿駅
あきれた アジテーターの手が「こちら側へ来い!」とスクリーンから首を絞めに来て揺れる
夜明け夕闇の底抜けの空 五右衛門風呂の踏み板が沈む 
路地裏から見た風景 垣根越しに植木鉢軍団を舐めて空に駆け上るカメラアイ
「ポリスに抱かれて死んでった!」’60年代のアイツとの日々

流れは割れて閉じ揺れる 釣り人は一瞬宙にバタ足で浮き
川面に強烈な夕日 ここは魚座が支配している水駅
定時の停車 此の岸で鹿毛は留まる さっと消える魚影


(2009・5・14)

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