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2010年4月5日月曜日

服喪のスートラ4 ママ ぼく でかける



語り手は「ゆけ ゆけ 二度目の処女」(1969年若松孝二監督映画)を新宿蠍座で観た男
「往生要集」恵心僧都はこの映像の切れ端を自殺を扇動したとして地獄へ落とすだろう 映画で地獄を示すために 
男は再び掘り起こす事になるのかな 二人の死体を 
舞台は原宿セントラル・アパート屋上 ポッポと月男は若松組お抱え吟遊詩人 
二人は屋上に落ちていたコーラの菊の紋章ブリキ栓をあどけなく握り締めた 
それが、手のひらに王冠型に突き刺さって痣となり血が噴出するも知らず



柿の木坂などをさ迷う臨死体験者 見えない肉体を纏った裸
隅田川を起点として東武線に寄り添って立ち並ぶ避雷針
夜は閉じた朝顔 昼顔 鎖陰である屋上
米のとぎ汁または小便が 舞台に流れ出て客席に瀑布の飛沫
ポッポと月男は迷わずビルからビルへとかけ渡された綱渡りを 
冥土 涅槃 餓鬼 畜生 修羅 親鸞 闇を開く



宇宙と血と泡箱と額紫陽花が開く
かび臭い地下室ベッドの裸
「行きつつある者は、行かない」は ゆけ
雷の巣から雨が迸り 二人がしがみついた避雷針
逆光で膨らんだ飛沫 ポッポを包む水
真夏の腐臭 浄化装置である屋上



夕立が光の在処を探し出し モノクロのフィルムに掠め取った
ハイビスカスの隣にひし形のドリアンが開く
人が流す赤い血 剣のさび 竜眼
地下室でホースだった桂冠詩人 月男のなめくじ裸
「心中しそこなったみたいで いやよ」雷雨にゆがむ避雷針下 ポッポは云った 
ホームレスになって子供が親を産むを確かめよ



幽閉者よ 葡萄前進して自動小銃を構え 
ラッキイ・セブンの瘋癲を殺害した屋上
雷はいま落ちるだろう 避雷針に
名前は消え 言語ゲームが始まりサヴァン症候群 脳を開く時
コンクリートにころがって漫画を読みたい 死ぬ前 二つの裸
「人間て 此処っから生まれてるの」 水から



記憶に打ち寄せる犯された海水
股間にまとわりつく砂粒を ポッポは陰部で食いながら溶かし
皮膚 肌を脱げ 骨肉 内臓を 太陽神経蒙を脱げ 
空に面した蜜室であり、空と鳥にも施錠した屋上
早回しされたぼくは 君の中のぼくを 君はぼくの中の君を切開する
ぼくたちは 衛星みたいに回りあっていた 太陽であった避雷針



吹き出す前の言語 そこに立っていた避雷針
宇宙は見えすぎだ 呼吸がすべてを姦通している
地上も宇宙も錆びたスペース・キイで開く
大ロング 鳥瞰の路面
朝霧が逡巡する屋上
カメラは 見下ろすばかり 血も出ない二つの裸



八月八日枕元にあった水 気が付けば原宿トリニティー教会を見下ろしている


(2009・5・21)

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