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2010年4月5日月曜日

服喪のスートラ5  不機嫌そうなデスマスク



風倉 匠 を偲んで

薄く平面化して行く苔むした荒屋敷 
踝の立ち位置である煉瓦 
始原の点に成ろうとする粉末 
霧となって溶ける柱 
方法はすぐさまバルーンとなり 
水に浮かべると墨流しの倉が現れる

脚立から光を追って空中にロケット風船で飛び立つ倉 
新聞紙に梱包された木馬亭銀幕 
咳き込みの諏訪湖の黒いバルーン 
中で弾け飛んでいる 
奉納としての肉体 
メリケン粉の足跡に毛を生やし

都美術館中央に限界重力で釣り下がり  
永久運動の振り子は宇宙音を拾いながら 
秋田弁を獲得した肉体
VANの扉を引きちぎり 
時限爆弾さえ抱き込んで
振り子のように振動するバルーン

ずるずるとキリストの筋子を引きずっているバルーン 
風を食らって電話線も消えた 
そのとき天井を支えていた煉瓦 
アダムが指差している倉 
天地創造を含む荒屋敷 
天井となって天地を貫くセスティーナの柱

時を越え 天井を失ったパルテノン エジプトアメン 
痰で裏返され 吐き出される肉体 
脳を少し抉り アルミホイールの空洞で残った
文字に書かれると目的を失った メディア
無い右手が宇宙音を拾い受発信する

轆轤から何度も振り落とされる 
軋む音の重みを支える 
火かき棒が知っている 
葉蘭にモカ・コーヒーを飲ませていた 
生贄とともに吹き飛んだ 
出番の回数だけ脳陥没が見える

夜明け前 痙攣する倉の窓 錆びた五寸釘 海岸を漂う煉瓦
薄明に包まれる荻窪荒屋敷 誰もいないアスベスト舘 踊り狂う四本柱 
湯布院の独楽 「時間の矢」に逆らって渦巻け 白い粉末

(2008・7・31)

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